更新: 2019/5/9



「天衣無縫」

Kana ni sitagau Roomazi
「仮名に従うローマ字」(一部「99式」をまるごと引用しています)(*本文中にあるリンクからこの本文に戻るにはブラウザの戻るボタンを押してください。)
 *「99式」を基本にしているが、特殊音の表記など「99式の欠点」を自分なりに修正したもの。
 *「99式の欠点」は、一般受け(普及)を重視してダイアクリティカルマークなどの符号を使わないことにこだわったこと。外来語に限ったこととはいえ「ティ」などの特殊音表記では「発音に従う」考え方をして、50音図に[ts]と[f]を追加してしまっている。(「仮名に従う」という考え方は画期的であったものの、これでは純粋な「仮名に従う」ローマ字とは言えない。一例として「プヮ」pwaは書けるが「ポヮ」の仮名に従えない。なぜなら表音式になってしまっているから)また、仮名に従うということは母音字が連続してしまう問題が不可避なのに99式ではここを重要視していない。(私は q の導入で対処できると思う)
 *「仮名に従う日本式ローマ字」という表現は削除した。
  (見た目は日本式とほぼ同じながら日本式は表音式を基本にしているので考え方が違う)
 *「新日本式ローマ字」(服部四郎氏)は日本語の表音的ローマ字としては完成度が高いが、表音式という時点で「致命的」ではないか。


主な主張
1.日本語をローマナイズする場合は「どう発音するか」ではなく「仮名文字でどう書いているか」を基準に考える。
2.現代仮名遣いとして表記が定まっている仮名綴りをローマ字で勝手に書き換えない。(「とうきょう」を「とーきょー」に直したり、助詞「を」wo 「へ」he 「は」ha などを o e wa などと中途半端に表音的に修正せず仮名のとおりに書く。(仮名の第一次正書法に従う)
3.長音符を使わない(長音を定義しない)。(カタカナ語での長音符「ー」は同一母音を重ねたものとみなす)
4.形態素の境界その他があって母音字が連続しているときは声門閉鎖音Qを「利用」して綴り字を調整する。(声門閉鎖音を区別するという意味ではない)(奥羽 Ouqu 範囲 hanqi 横尾 Jokoqo など。長音符を使わないことと対応する)
6.仮名をローマ字に変換するには50音図対照表(以下参照)により、行と列によって仮名文字と対応させる。(子音と母音を分けて発音記号のようにローマ字を扱わない)

 

A.原理
1.(翻字法としてのローマ字)
 漢字仮名交じり文(以下「原文」と呼ぶ)を日本語の正書法と考え、原文からローマ字への「翻字」としてのローマ字表記を考える。(ここでいう翻字とは機械的な逐字翻字ではなく「仮名の綴り」を「基準」に考えるということ)
2.(仮名に従う)
 実際の発音(音韻)に従ったローマ字綴りとして考えるのではなく、「仮名文字でどう書かれているか」に基づく「仮名に従うローマ字」として考える。
3.(ふりがな方式)
 漢字、カタカナ及び長音符号(ー)は「ふりがな(平仮名による)」を振られたものとして考え、これを原文に対する第一次正書法とし、これを直接の対象としてローマ字に書き写していく。(分かち書き等では原文も参照する)

 (濁音、半濁音の仮名は符号がついた仮名ではなく別の文字として扱います。「か」と「が」など)
 

↑原文          ↑第一次正書法      ↑仮名に従うローマ字
 
 日本語の正書法は「原文」(漢字仮名混じり文)の段階では文学的用字などもあって正書法はないし読み方も統一されているわけではない。これと西欧の正書法を比較して、日本語には正書法がないなどと言うのはナンセンスで、第一次正書法の段階ではきちんとした正書法がある。「行く」には「ゆく」と「いく」があって統一されていないが「行く」という「原文」に対して仮名で「ゆく」と書くなら、juku と表記され、[いく」と書くなら iku と表記される。「明るい朝」を「あかるい あした」と読む場合「あかるい あした」と仮名で書かれた段階ではそれ以外に書きようがない。逆に「あかるい あさ」なら Akarui asa 以外にない。第一次正書法から原文を復元することはできない。原文では「バレエ」と「バレー」を用字法として区別していてもローマ字化した段階で「ばれえ」一択となり、元の区別は失われる。漢字の同音異義語もローマ字化した段階で元の区別は類推で判断するしかなくなるのと同じこと。
 

B.長音の表記
上記原理により、「長音の表記」という概念はなくなる。
1.ふりがなにより、ひらがなの<あ><い><う><え><お>で書き表されるもの(いわゆる長音)は仮名(現代仮名遣い)のとおり<a><i><u><e><o>とする。(ちなみに、仮名に従うローマ字ではこれを「代書法」とは言わない。正式な綴り)
 例) お父さん(おとうさん)otousan (この綴りで一般的には「オトーサン」と読むということ。「お・と・う・さ・ん」と読むわけではない。仮名の「おとうさん」の読み方に同じということ)
    お母さん(おかあさん)okaasan
    お兄さん(おにいさん)oniisan
    お姉さん(おねえさん)oneesan
    大きい(おおきい)ookii
    小さい(ちいさい)tiisai
    バレエ(ばれえ)baree
    ボウリング(ぼうりんぐ)bouringu
2.漢字はふりがな(現代仮名遣い)に直して、上記1と同様とする。
 例) 空港(くうこう)kuukou
    大阪(おおさか)Oosaka
    東京(とうきょう)Toukjou
    経済(けいざい)keizai
3.カタカナの長音符号はふりがな式に直前の母音字を重ねて表す。(仮名書きでの長音符「ー」を否定するものではない。仮名書きではむしろ便利)
 例) ボードレール(ぼおどれえる)Boodoreeru
    コンピューター(こんぴゅうたあ)konpjuutaa
    バレー(ばれえ)baree *原文における「バレー」「バレエ」の書き分けはふりがな式により「ばれえ」のみとなる。
    ボーリング(ぼおりんぐ)booringu *ボウリング(ぼうりんぐ)とは仮名綴りの違いにより区別される。
 
C.外来語の表記
 「翻字法としてのローマ字」という原理に基き、本方式では外来語を日本語の中で実際の発音がどうだからこう書き表すべきということは考えず、実際にカタカナ(前項3.のようにすべてひらがなに置き換えるものとする)で「どう書かれているか」ということに従い、あらゆる仮名綴り(ゆれがあり、現代仮名遣いのように確定した綴りはない)のとおりに、本ローマ字の翻字規則に基いて表記する。
 
 つまり一般的には、英語の<violin>から来た外来語の仮名文字表記は<バイオリン>か<ヴァイオリン>かとか、外来語の中で「完全に日本語化したもの」と「外国語 としての意識が残っているもの」の弁別とか、外来語をカタカナで書くか、もとの言語での文字の綴りのまま書くか、とかいったことに結論を出すのではなく「翻字法としてのローマ字」という原理に基き、仮名文字表記での「ゆれ」はそのままに、しかし漏れなく、仮名で書かれたものをローマ字に書き写すことができるようにする。
 
 また、ここでも「仮名に従う」及び「ふりがな方式」の原理に基き「発音」ではなく「仮名文字」でどう書かれているかによってローマ字に書き写す。(詳細は翻字規則を参照)
 
 念のため言うと、現代仮名遣いが「正しい」のだからそれに従えと言っているのではなく、それは国語国字問題として「全く別に考えること」であって、仮名遣いが表音的に改められたのなら、それに従うまでということ。つまり、仮名遣いに従うのは仮名遣いの欠点と言われている部分ですらそのまままるごと従うということ。  
 
 それをローマ字表記で、自分の考える「理想的な日本語の正しい発音」を一挙に実現しようとするから話がおかしくなる。国字でもないローマ字で自分の理想論を言っても何の意味もない。そもそも表音式ローマ字ではだれもが納得する完璧な方式などない。例えば、新日本式ローマ字で<c>を追加して「ツァ行」に当てるというのなら<f>も追加して「ファ行」に当てたらいいじゃないかとか撥音<n>の表記とか、どこまでいってももやもやしたものが残る。日本式で言えば、「チ」は音韻論で<ti>と定義するというなら、「ティ」はどうするのか。あるいは、<ei>は「鋭意」と書くときに不都合だから長音の「エー」にしようと言い始める。じゃ魚の「えい」も「エー」だと強要するのだろうか。  
 
 また、ローマ字は日本語の国字ではないのだから、ヘボン式のように国際的な英語に借りて表記すればいいのであって、何も「日本独自の」ローマ字で書く必要はないというが、自分の名前や地名も満足に書けないものであっていいのか。東大の英語研究部会では「地下鉄」は tikatetu と書いたら外国人(英米人?)に読めないから chikatetsu と書けという。いや外国人には subway と国際的な英語で書かなければ読めないだろう。東大ともあろう学府でありながら、英語中心にしか考えられない。それなら日本語のローマ字に口出しをするなと言いたくなる。ヘボン式ローマ字の正統性を主張するのに、bento でも通じるだろうとか、それこそ噴飯ものではないか。じゃ東欧はTooで我慢しろと? 
 
 
D.「ち」「つ」の考え方について
 「仮名に従う」理念に基づき、仮名小文字を添えて表す拗音等の仮名表記を除き、直音を表す仮名文字については、その発音を拠り所にするのではなく、50音図において「どの行のどの列 の文字か」に基いてローマ字に書き写す。「行」は子音に対応し、「列」は母音に対応する。
 まず、母音を表す「あ行」の仮名文字である<あ><い><う>< え><お>のローマ 字綴りは<a><i><u><e><o>とする。(注: この基本的な部分では音に従う。すなわち、<a><i><u><e><o>の ローマ字の国際的に一般的と思われる発音に基いて、仮名文字との対応を決めている。)
 「か行」の仮名文字<か><き><く><け><こ>は、母音字のまえに<k>をつけて<ka><ki><ku><ke><ko>と書き表す。同様に「さ行」 は<s>、タ行は<t>、ナ行は<n>、ハ行は<h>、マ行は<m>…(ローマ字表参照)となる。(注: この部分も、基本的に母音字のときと同じように音に従っている。すなわち、各行の仮名文字の発音の代表的と思われる子音と、それぞれのローマ字 の国際的に一般的と思われる発音に基いて、仮名文字との対応を決めている。)
 つまり、現在行われている日本式ローマ字では<ち>という仮名文字は<ti>というローマ字綴りで、<つ>という仮名文字は<tu>というローマ字綴りをあてるが、これらは、かつて日本式ローマ字綴りがヘボン式ローマ字綴りに対して行ったように「音韻論」にもとづいて正当化されるのではない。つまり、<ち>という仮名文字や<つ>という仮名文字の発音に従うのではなく、それぞれ「た行」の「い列」の文字だから<t>と<i>で<ti>と書き、「た行」の「う列」の文字だから<t>と<u>で<tu>と書くという原理によって正当化されるものと考える。  
 直音仮名については50音図に従い、その他拗音等については別に翻字規則を定める。(例えば仮名小文字を個別にとらえても意味がない。「キャ」は「キ」と「ャ」に分解して考えるのではなく「キャ」全体として置き換えて考えて<kja>に対応させる。<kijya>などと書いても読みにくいだけになる。「仮名の基準に従う」ことが目的なので、杓子定規に文字を逐次翻字するということではない)(こちらのブログ記事も参考に)
 
E.助詞「へ」「は」「を」の考え方について
 現行の国際標準(ISO 3602:1989)では基本的に表音式でありながら例外的に厳密翻字と称して<he><ha><wo>も否定していないが、本ローマ字では「仮名に従う」理念に基き、常に仮名のとおり「へ」<he>「は」<ha>「を」<wo>とする。基本的に翻字式であるから「厳密翻字」などという特例はなく、常に仮名に従う。
 
 なお、注釈注記符号を省略せずに書いたものを本ローマ字では「厳密表記」と呼ぶ。例)「ハァゲン・ポァゼィユ」Háagen Pòazèīju(はぁげん・ぽぁぜぃゆ)や「王を追う」Óu wo ou (おぅをおう)などと仮に表記した場合の仮名小文字を厳密に注記したものや発音を注記したもの(もし「ゼィ」を二重母音として発音し「ポァ」も合拗音としての意識がないなら Háagen Póazéiju と注釈される)。しかし綴り字(スペル)は仮名に従うのだから例外なく常に一定である。つまり一般表記としては、特殊音の注記符号は省略してHaagen Poazeiju、Ou wo ou. で十分である。(もし「プヮ」なら Pwa となり、発音はPòaと同じ。発音に合わせているのではなくて仮名の綴りに合わせている)

 つまり仮名に従うローマ字は発音記号ではないのだから綴り字を確定することが重要なのであり(日本語の発音の揺れは綴り字が吸収する)、発音記号ではないのだから仮名小文字を含めた正確な仮名綴りとの対応という厳密性を要求するなら符号をつければ事足りる(本仮名に従うローマ字では注釈符号で発音も区別できるからより正確)。英語の綴りでも本来は符号だらけの表記である。それを英語では符号を省略して綴り字(スペル)で読んでいる。だからローマ字の長音符も当然のごとく外されてしまう。ところが日本語にとっては「長音」として注記・注釈的な符号で書くような性質のものではなく、非常に重要な言葉の要素なのに、きちんとした母音の綴り字として書かずに、それを単に長音符として書くから省略されてしまうことになる。
 
 カタカナ書きの外来語の場合は、長音符は非常に便利で、棒引き長音で書いてあればそこに形態素の切れ目がないことが明白になるので、非常に読みやすくなる。でも、その長音の概念を日本語全部に適用しようとすると、長音を厳密に「定義」しなければならない問題が出てくる。むしろローマ字では長音という概念をやめて、逆に棒引き長音で書かれる(主に外来語)では本来の日本語での「おおきい」「ちいさい」のように同一母音を重ねる(ふりがな式)にして、長音という概念をやめたほうがいい。そうすると形態素の切れ目がわかりにくくなることがあるので、<q>という声門閉鎖音を応用した書き方を提案している。ここで注意してほしいのは声門閉鎖音を表音的に区別しようと言っているわけではない。q と書いたからといって必ずそこが声門閉鎖音として発音するわけではない。言葉を分けるのに声門閉鎖音的なものを利用しているだけ。だから母音で始まる語のすべてにも q を入れなきゃおかしいだろうと言って笑う人がいるが、表音式ローマ字で声門閉鎖音を区別するという話をしているのではない。

 形態素の切れ目がわかりにくい問題は長音符を使ってもすべて解決されるわけではない。もちろん、<q>を使ってもすべて解決するわけではないが、大分ましになる。例えば「営利」「絵入り」は<eiri> <eqiri>と区別して書ける。表音式では「営」を「エー」という長音だと言い張れば区別できるがかなり強引なことになる。よく言われることに、そんなものは絵入りならe-iriと符号で分けて書けばいいだろうというが、つなぎ(-)も分かち書きの一種なので、分かち書きの原則とも関係してくる。ただ思いつきで「その都度符号で分けて書けばいいだろう」といっても、あらゆる場合を想定すると、その都度ではなく全体のシステムとして一貫して考えたほうがいいのではないか。(この辺は意見が分かれるところかとは思う)  
 
 <q>を導入することにより、今まで書きにくかった「奥羽」Ouqu 「経緯」keiqi 「範囲」hanqi などが自然に書けるようになる。<q>に対する仮名文字はないので、仮名に従うローマ字では例外となり「促音」は「促音」として表音的にとらえる。仮名文字に単純に対応していないので「原文」から<q>を入れるかどうかの形態素境界(など)を判断をすることになるが、日本語を知っている日本人なら難しいことではない。(形態素については別途きちんと整理する必要があるが、活用語尾などのいわゆる「文法的形態素」と言われるものには<q>は使わない。「思おう」は omoou であって omoqou としない)<q>に子音字が続く場合は促音となると定義する。「マッマ」maqma 「マッハ」maqha など、ヘボン式ローマ字などでは従来表記できなかったものも普通に書くことができる。そのため、実際の発音にかかわらず仮名小文字「っ」は一律に q で表記する(「あっあ」などの場合は aqqa と表記する)。ローマ字は外国人の都合で考えるものではなく日本語を知っている日本人のためにあるものである。こうして決められた日本語のローマ字のスペルを外国人はそのまま受け入れればいい。どう読むかはその外国人の見識に委ねる。例えば、英語しか知らない外国人がフランス語をどう読むか。そんなことは関知することではない。
   
 <q>を導入しようとしたきっかけは長音符を使うのをやめようとしたからというのもあるが、正直言うと「好み」の部分も大きい。長音として読む場合には同一母音字の連続であらわすという感覚が定着するとローマ字での母音字の連続では一つずつ分けて読むのではなく連続して読むイメージになってアクセントにも影響する。または発音そのものも、特に旧仮名遣いでは「あう」が「おー」になったりするくらいなので、例えば「ひろあき」と仮名で書くならいいがローマ字で Hiroaki と書くと「ひろーき」というイメージになる。そこで<q>を入れて Hiroqaki と書くと漢字の「弘明」を読むときのリズム感をある程度再現できる(母音連続に限った話としても)のでしっくり来る。この感覚に慣れてしまうと<q>を入れないととても気持ち悪い。
 
F.翻字規則
 以下の拡張表の解説を参照。
 <q>の用法については以下の「概略」を参照
 
G.分かち書き
 (未整理)いわゆる「東大システム」を基本とする。
 

H.仮名に従うローマ字拡張表(案)

 (外来音を含めた多様な(自由な)仮名表記に対応するため)
 (この表ではヤ行を[y]で表記していたが[j]のほうがヘボン式との違いを明確にできるので、[j]に変更)

 仮名に従うローマ字で対象とする仮名文字は第1表(直音)及び母音・半母音の小文字の仮名とする。促音の「っ」については促音として扱い、仮名文字の対象としない。また「外字」として仮名の「ヴ」を加える。撥音「ん」については、すべて単独の<n>を当てる。母音(撥音に続く場合は半母音も)で始まる形態素に<q>を挟むので、<n>は必然的に撥音ということになる。「範囲」hanqi

第1表(直音) 
a  i  u  e  o
あ い う え お
ka ki ku ke ko
か き く け こ
ga gi gu ge go
が ぎ ぐ げ ご
sa si su se so
さ し す せ そ
za zi zu ze zo
ざ じ ず ぜ ぞ
ta ti tu te to
た ち つ て と
da di du de do
だ ぢ づ で ど
na ni nu ne no
な に ぬ ね の
ha hi hu he ho
は ひ ふ へ ほ
ba bi bu be bo
ば び ぶ べ ぼ
pa pi pu pe po
ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ
ma mi mu me mo
ま み む め も
ja ji ju je jo
や イ ゆ エ よ
ra ri ru re ro
ら り る れ ろ
wa wi wu we wo
わ ゐ ウ ゑ を

*表中のカタカナは主に外来語等で使用される。「ふりがな式」で翻字する場合はすべて「ひらがな」として考えるが、外来音であることを示すためにあえてカタカナで表記した。上の表では<ji><je><wu>については重出としてア行のカタカナで表示した。(重出であることを利用して別の用途に応用した使い方をする)

*すべての表中のローマ字(綴り)は対応する仮名の読みに従う。例えば「を」は[wo]という発音を表すのではなく、ワ行のオ列だから<wo>と書き、発音は「を」という仮名をどう読むかに依存する。

*以下、仮名小文字であらわすいわゆる拗音についても、仮名を「行」と「列」という2つの要素のいわゆる50音図による一覧を示したもので、日本語の音節図として書き出したものではなく、応用することでここに例示した以外の用例もある。

*拗音については一律にja ji ju je jo wa wi wu we wo を添えてあらわすものとし、それに外れたものはアキュートアクセント、グレーブアクセントを使用して書く。ただし、拗音の仮名小文字については仮名に従うので「キャ」はk+jaとなり「ヤ」の小文字が対応する。ヤ行とワ行の小文字で仮名文字として存在しないji je wu については「イ、エ、ウ」の小文字として代用することができる(キェ/kjeなど)。「ヰ、ヱ、ヲ」についてはあくまでもwi we wo が対応するので、仮名小文字としては存在しないが「イ、エ、オ」のかわりに乱用しない。例えば「フィ」をhwiとはせず、あくまでも仮名に従ってhúiとする。hwa は「フヮ」が対応するので「ファ」húaとは異なる。「フゥ」はwu に対応する仮名文字がないので「ウ」に代用して hwu を「フゥ」としてもよいと決めているだけ。(ji je wu は例外なので、ややこしければ例外を認めないとしたほうがすっきりはする)


 99式では外来音については仮名に従っていないので「クァ」はkwaを当てるが「クヮ」の仮名については例外的にkwwaと表記している(厳密翻字という言い方をしている)。本ローマ字もこの考え方に惑わされていたが、仮名に従う考え方とは矛盾する。なぜそうするかというと、「クァ」を仮名のとおり書くにはkúaと符号をつけざるを得なくなるからで「符号を使わない」という99式の理念から外れるからだと思う。本ローマ字では外来語の特殊音に符号がつくのは当たり前であり、またローマ字の目的からして外来語の表記に腐心する理由はないと考えている。


 アキュートアクセントは対応する仮名の次に続く文字を小文字化させる。

(例 kúa クァ) 一般的には2拍になる

 グレーブアクセントはe と o のみに使い、è = j、ò = w をあらわす。

(例 tèu テュ tòa トヮ) 一般的には1拍になる(以下、表を参照)

(以下も同様に非常に特殊な綴りになる場合もあるが、そもそも外国語などの非常に特殊な仮名綴り(特殊な発音)をわざわざローマ字で書くという状況自体が非常に特殊なのであって、そこは筋が通ってさえいればいい。それを「やさしく」「簡単に」書けたところで使いみちはない。特殊な仮名表記が難しくなるのは仕方がない。大事なのは、日本語の地名・人名、一般的な日本語などを不自由なくきちんと書けるようにすることこそを優先して考えるべきで、外来語などというものを表音的に書くことに汲々とするあまりに、例えば長音の概念などを例に挙げれば、その結果として、東京、大阪、公園をトキョ、オサカ、コエンなどと不自由に書くことを強要されるほうがよほど本末転倒なのであって、ティだのトゥだのはどうでもいいことではないだろうか)

tèu(テュ)tòa(トヮ)は téju / tówa ならグレーブアクセントは不要で、規則的にはすっきりする。外来語なので例外的に表音的に表記しているだけ。(ここは個人的な好み)



第2表(代用ヤ行)ji=í

jia jii jiu jie jio
イァ イィ イゥ イェ イォ

*<i>にアキュートアクセントをつけて<í>としたものをヤ行の「イ」<ji>に置き換え、例えば「イァ」なら<a>を添えて<jia>と定義する。次の「ィ」「ゥ」「ェ」「ォ」も同様。ただし、この<jia>行は「常に単独」で使われる。前に子音をつけると第3表の拗音のイ列+ア行になるので注意(<kjia>なら「キィア」となる)。<jie>は[je]という発音を表すのではない。1拍で読むか2拍で読むかは「イェ」の仮名の各人の読み方に委ねる。jを使うと母音字から続く場合に便利。

*もし万一「イァ」ではなく「イャ」という仮名があれば<jja>と表記すると定義する。

 

第3表(イ列拗音)
kja kji kju kje kjo
きゃ キィ きゅ キェ きょ
gja gji gju gje gjo
ぎゃ ギィ ぎゅ ギェ ぎょ
sja sji sju sje sjo
しゃ シィ しゅ シェ しょ
zja zji zju zje zjo
じゃ ジィ じゅ ジェ じょ
tja tji tju tje tjo
ちゃ チィ ちゅ チェ ちょ
dja dji dju dje djo
ぢゃ ヂィ ぢゅ ヂェ ぢょ
nja nji nju nje njo
にゃ ニィ にゅ ニェ にょ
hja hji hju hje hjo
ひゃ ヒィ ひゅ ヒェ ひょ
bja bji bju bje bjo
びゃ ビィ びゅ ビェ びょ
pja pji pju pje pjo
ぴゃ ピィ ぴゅ ピェ ぴょ
mja mji mju mje mjo
みゃ ミィ みゅ ミェ みょ
rja rji rju rje rjo
りゃ リィ りゅ リェ りょ
*イ列仮名に続くときはヤ行の小文字仮名(基本表のja ji ju je jo)を表し、ji je は重出のイ、エである。この場合、子音がイ列で口蓋化していれば「シェ」なども自然に発音できる。ただし本ローマ字では仮名に従うので発音には関知しない。つまり「ミェ」という発音が日本語にあるかどうかではなく、「ミェ」という仮名綴りに従って書いているだけで、読みはその仮名を実際にどう読んでいるかに「依存」するという考え方。他の表でもこの考え方で一貫している)

 

第4表(イ列疑似拗音)
kía kíi kíu kíe kío
キァ(キィ)キゥ(キェ)キォ
gía gíi gíu gíe gío
ギァ(ギィ)ギゥ(ギェ)ギォ
sía síi síu síe sío
シァ(シィ)シゥ(シェ)シォ
zía zíi zíu zíe zío
ジァ(ジィ)ジゥ(ジェ)ジォ
tía tíi tíu tíe tío
チァ(チィ)チゥ(チェ)チォ
día díi díu díe dío
ヂァ(ヂィ)ヂゥ(ヂェ)ヂォ
nía níi níu níe nío
ニァ(ニィ)ニゥ(ニェ)ニォ
hía híi híu híe hío
ヒァ(ヒィ)ヒゥ(ヒェ)ヒォ
bía bíi bíu bíe bío
ビァ(ビィ)ビゥ(ビェ)ビォ
pía píi píu píe pío
ピァ(ピィ)ピゥ(ピェ)ピォ
mía míi míu míe mío
ミァ(ミィ)ミゥ(ミェ)ミォ
ría ríi ríu ríe río
リァ(リィ)リゥ(リェ)リォ
*見えづらいが<i>にアキュートアクセントがついている。
*第3表の<j>を<í>に変えたもの。この子音に続く<í>は第2表の代用ヤ行に置き換えて使うことはできない。(代用ヤ行は前に子音がつかない)
*ji je はイ、エの重出になるので、イ列とエ列については第3表の拗音綴りを優先する(拗音綴り優先の原則)。2拍で読むか1拍で読むかは仮名に従う。


第5表(エ列拗音) è=j 
tèa tèi tèu (tèe) tèo
テャ ティ テュ テェ テョ
dèa dèi dèu (dèe) dèo
デャ ディ デュ デェ デョ
*他のエ列の仮名、ケ、ゲ、セ、ゼ、ネ、ヘ、ベ、ペ、メ、レにも応用可能 (<sèu>セュなど)。
*子音を含むエ列の仮名にヤ行の小文字が続くものを表す。
*<tèe>は仮名の「テェ」を表すだけで表音式ローマ字(ヘボン式とか訓令式)でいう<tje>のような表記とは違う。表音式ローマ字の<tje>は仮名表記できない。またエ列の(「テェ」など)の仮名に対してはアキュートアクセントを使うのでまず使用しない。(「テェー」のように「テェ」が見かけ上の短音になっても、短音ではなくアキュートアクセントにより<téee>とする)
*<tèi>は仮名の「ティ」を表すが注釈符号によって表音的に音を区別している。アキュートアクセントによる<téi>も仮名は「ティ」だが二重母音としての「ホームスティ」などの「ティ」を表す。短音として読むのか二重母音として読むのかが仮名の綴りでは判断できない場合は、常にアキュートアクセントを優先する。
*応用として、歴史仮名遣いの「てう」を「ちょう」と読むことを明示したい場合、「てぅ」と考えて<téu>とアキュートアクセントで表記し、外来語の「ステューデント」などの「テュ」と区別できる。<sutèuudento>
ただし、注釈符号は多くの場合、厳密表記以外では省略される。

*(「99式」では<j>がこの<è>に相当する。ただし<w>の考え方は全く異なる)

 

第6表(ウ列拗音)
twja twji twju twje twjo
ツャ(ツィ)ツュ(ツェ)ツョ
dwja dwji dwju dwje dwjo
ヅャ(ヅィ)ヅュ(ヅェ)ヅョ
hwja hwji hwju hwje hwjo
フャ(フィ)フュ(フェ)フョ
*子音を含むウ列の仮名にヤ行の小文字が続くものを表す。
*他のウ列の仮名「クャ」などにも応用可能。
*イ列、エ列では第8表の重出なので使用しない。

*この表での<w>(母音字を伴わない)は前の子音字がウ列での発音となることを表すのみであり、<tw>は「ツ」という直音仮名に対応する。表音的に見た子音字<wj>の連続「拗音の拗音」という意味ではない。つまりウ列の仮名(「ツ」など)に対してヤ行の仮名小文字が添えられた拗音と考える。(これについては、tújaと書くこともできるが、綴りと拍のバランスをとるためにtwjaとしている。tuaと綴ってuに何らかの符号をつけることも考えたが特殊過ぎるので見送った。テュ tèuでは符号であらわしている。仮名に従うのを原則とした上で、杓子定規に逐次翻字するのではなくローマ字として自然な綴りになるようには考慮すべきと考える)

 

第7表(代用ワ行) wu=<ú> 
wua wui wuu wue wuo
ウァ ウィ ウゥ ウェ ウォ

*<u>にアキュートアクセントをつけて代用ワ行を表す<ú>としたものをワ行の「ウ」<wu>と定義して「ウァ」を<wua>とする。次の「ィ」「ゥ」「ェ」「ォ」も同様。ただし、この<wua>は「常に単独」で使われ、前に子音をつけて疑似合拗音として使うことはできない(<kwua>とした場合は次の第8表が適用されて「クゥア」という仮名が対応する)。読みは1拍で読むか2拍で読むかは「ウァ」行の仮名に従う。wを使うと母音字から続く場合に便利。

*もし万一、ワの小文字が続いて「ウァ」ではなく「ウヮ」とする場合は<wwa>と定義する。
 
第8表(ウ列合拗音)
kwa kwi kwu kwe kwo
クヮ -  クゥ -  -
gwa gwi gwu gwe gwo
グヮ - グゥ -  -
swa swi swu swe swo
スヮ - スゥ -  -
zwa zwi zwu zwe zwo
ズヮ - ズゥ -  -
twa twi twu twe two
ツヮ - ツゥ -  -
dwa dwi dwu dwe dwo
ヅヮ - ヅゥ -  -
nwa nwi nwu nwe nwo
ヌヮ - ヌゥ -  -
hwa hwi hwu hwe hwo
フヮ - フゥ -  -
bwa bwi bwu bwe bwo
ブヮ - ブゥ -  -
pwa pwi pwu pwe pwo
プヮ - プゥ -  -
mwa mwi mwu mwe mwo
ムヮ - ムゥ -  -
rwa rwi rwu rwe rwo
ルヮ - ルゥ -  -

*ヰ、ヱ、ヲには小文字がない(該当する仮名綴りがない)ため、kwi kwe kwo などは空白になっている。

もし「ク」(フォントがないのでsmallタグで表示した)などと小文字で書くなら、kweと書く。
例外として、ヰ、ヱ、ヲには小文字がないのだから、クィ、クェ、クォにkwi kwe kwo を当てるという考え方もできるかもしれないが、混乱するので、原則としてkwi kwe kwo ではなくウ列疑似合拗音としてkúi kúe kúoと書くのが無難だと思う。

*ワ行ウ列wuには該当する仮名がないため(ウの重出)、クゥはウヮ行としてkwuを優先する。
 
第9表(ウ列疑似合拗音)
kúa kúi kúu kúe kúo
クァ クィ(クゥ)クェ クォ
gúa gúi gúu gúe gúo
グァ グィ(グゥ)グェ グォ
súa súi súu súe súo
スァ スィ(スゥ)スェ スォ
zúa zúi zúu zúe zúo
ズァ ズィ(ズゥ)ズェ ズォ
túa túi túu túe túo
ツァ ツィ(ツゥ)ツェ ツォ
dúa dúi dúu dúe dúo
ヅァ ヅィ(ヅゥ)ヅェ ヅォ
núa núi núu núe núo
ヌァ ヌィ(ヌゥ)ヌェ ヌォ
húa húi húu húe húo
ファ フィ(フゥ)フェ フォ
búa búi búu búe búo
ブァ ブィ(ブゥ)ブェ ブォ
púa púi púu púe púo
プァ プィ(プゥ)プェ プォ
múa múi múu múe múo
ムァ ムィ(ムゥ)ムェ ムォ
rúa rúi rúu rúe rúo
ルァ ルィ(ルゥ)ルェ ルォ
*<u>にアキュートアクセントをつけて続く仮名を小文字にする。
*この子音に続く<ú>は第7表の代用ワ行に置き換えて使うことはできない。代用ワ行は前に子音がつかないので、ウァwuaに子音をつけてkwuaとしても「クゥア」にしかならない。
*wu はウの重出になるので、ウ列については第8表のウ列合拗音綴りを優先する(拗音綴り優先の原則)。クゥkwu など。2拍で読むか1拍で読むかは仮名に従う。

 

第10表(オ列合拗音) ò=w
tòa tòi tòu tòe tòo
トヮ - トゥ -  -
dòa dòi dòu dòe dòo
ドヮ - ドゥ -  -
hòa hòi hòu hòe hòo
ホヮ - ホゥ -  -
*オ列の子音を含む仮名にワ行の仮名小文字が続くもの。(つまりヰ、ヱ、ヲの仮名小文字はないので空白となる)
*トゥなどウ列についてはwuは重出の「ウ」に同じなので、合拗音表記を優先する。(トゥ tòu)
*他のオ列の仮名、コ、ゴ、ソ、ゾ、ノ、ホ、ボ、ポ、モ、ロにも応用可能。(ポヮ<pòa>など)

*「99式」では<ò>を<w>で代用し、そのかわり仮名に対応しない<ts><f>を追加したため、表全体の規則が崩れている上に「ポヮ」などの規格外の仮名が表記できない。また<fu>は「ふぅ」であり「ふ」はあくまでも<hu>でなければならず、「フード」を<fuudo>と書いたら「ふぅーど」の仮名が対応することになる。(外来語に限った話だとしても仮名に従っていることにはならない)本方式ではもともと日本語にはない「ゔ」の子音<v>のみ追加し、例外(外字)とする。
*長音の「とぅ」を明示するには<tóu>とアキュートアクセントで表記し、短音の「トゥ」と区別できる。<tóu sjuuzu> トゥシューズ。(発音を注記する方法として、仮名遣いの「とう」を長音として読むことを明示したい場合、「とぅ」とすれば「東京」<Tóukjóu>と考えることもできる。ただし、あくまでも表音的に「注記」すればできるというのにすぎない。また、長音を明示と書いたが、トゥシューズにように二重母音とも見ることができるので発音記号のように正確なものではない)

 


 

第11表(外字)
va vi vu ve vo
ヴァ ヴィ ヴ ヴェ ヴォ
vja vji vju vje vjo
ヴャ - ヴュ - ヴョ

vwa vwi vwu vwe vwo

ヴヮ - ヴゥ  -  -

*第10表までの原則からいうと<vu>が「ヴ」なら「ヴァ」は<vua>ということになるが<va>と表音的に扱うことになる。もし「ヴゥ」とするなら合拗音として<vwa>のウ列として表記できる。<vwi>などは「ヰ」の小文字を添えることになるので、仮名表記できない。概ね原則に準ずるものの仮名と規則的に対応せず「表音的に考える」ため「外字」と呼ぶ。ヴは外来語固有で直音仮名と被ることはないので問題がないが、もし99式のように<tsu>や<f>も導入した場合には、この<vu>と全く同じく音声を「表音的」に捉えなければならなくなり、<fu>を「ふ」ではなく「ふぅ」と考えて区別したとしても<h>と<f>が表音的に曖昧になる。つまり、「ライフ」はraihu と書かなければならず、raifuと書くと「ライフゥ」になってしまう。ファをヴァと同類と考えると一見もっともらしいが、細かく見ると矛盾する。


そのほかの外字(あくまでも参考として)

 外来語またはカタカナ表記に限って次の外字に「置き換え」ることは可能だが、表音的ローマ字になってしまう。
è = y (ただし、ヤ行に j を使う前提で)
ò = v (必ず子音に続いて使用されるため「ゔぁ」行の子音とは区別される)

 符号なしで書ける利点があるが、表音的書法は極力避けるという点では、むしろ<e><o>と書いて符号を省略して綴り字で読み分けたほうが仮名に従うローマ字の原則である。「ショートスティ」などの「ティ」は二重母音であり<tji>と書くことができない。実用上は便利としても、同じ「ティ」という仮名について短音かどうかを表音的に確定して考えて書くということになる。つまり、仮名に従うのではなくて「発音に従う」ことになるので、仮名に従うローマ字の趣旨から矛盾する。


(表音的「外字」として<ts><f>を代替する捨て案)

tw=ts (ただし<tsu>は<twu>ではなく<tu>に対応し、「ツゥ」とするときは<tswu>とする)
 (dw=dz *もしあれば<ts>上に準ずる)(ts=c dz=x に置き換えたとしても理屈は同じ)
   注意 <twa>「ツァ」行は併存し、<tòa>「トァ」行に使えるわけではない。
hw=f (ただし<fu>は<hwu>ではなく<hu>に対応し、「フゥ」とするときは<fwu>とする)
 そうしないとfuudoは「フゥード」に対応するのであって「フード」huudoには対応しないことになり混乱する。(どのみち混乱するが)
 注意 <hwa>「ファ」行は併存し、<hòa>「ホァ」行に使えるわけではない。

例)tjinpanii(teinpanii) ティンパニー tvumoroo(toumoroo) トゥモロー piqtsa(piqtwa) ピッツァ 
  Toqtsii (Toqtwii) トッツィー(新日本式のようにtsi(ci)=チでないことに注意)
  Hvanhvan ホァンホァン(Hoanhoan) faqsjon(hwaqsjon) ファッション

99式に若干似ているが、<twa><hwa>は「トァ」「ホァ」には使えず「ツァ」「ファ」として並存するため混乱する。()内は本方式

 

 また、「イ」列の仮名の子音を<sj=sh><tj=ch><zj=zh><dj=j>として使用する場合も仮名文字と不適合(<shi>が拗音「シィ」に分類され「シ」の直音に使えないので、「シィ」は<shji>とするが<sji>と<si>も併存するなど、上のウ列子音と同じ問題が起こる。(また「シァ」は<shía>で「シャ」は<sha>となり<sía><sja>も併存する)外来語に限って使うにしても規則が煩雑となり混乱する。
 
 よって、「外字」はもともと日本語にはない<v>のみに限るべきだと思う。もしヘボン式のような表音式ローマ字で強引に「仮名に従う」場合には、仮名と規則的に対応できず、仮名ではなく発音を主体に考えるようになるので、そもそも論理的に矛盾する。
 

 

注釈符号(ダイアクリティカルマーク)/特殊文字

<è><ò>のみ 表音的注釈符号 (グレーブアクセント記号)*拗音のj/wと同じ

<á><í><ú><é><ó> 形態的注釈符号 (アキュートアクセント記号)*1字目の母音に冠して続く母音字を小文字化する(どう発音するかは仮名文字でどう読むかに依存する)。「かぁ」<káa>など。(仮名の読みに従うので必ずしも長音とはならないので注意)

<ī><ū> 長音符 (マクロン)*「コミュニティ(ー)」の「ー」など、仮名で表記しない長音の注記用

*以上の注釈符号は厳密表記として以外では「省略」する。(厳密表記=符号を省略しないというだけの意味)

<'>  省略符 <-> つなぎ (一般的な使用法と同じ)*分音符などに乱用しない

<x> 規格外の単独の仮名小文字を強制的に表す(キーボード式ローマ字より借用)
「そうですねぇ」<Sou desu ne xe>などに使用。

<q> (閉音文字)(声門閉鎖音より借用。擬似的な閉音節をつくる)*形態素末に添える黙字。子音字が続くときまたは語尾では促音を表す。「合致」gaqti 「マッハ」maqha 「イッヌ(犬)」iqnu 「弱!」(よっわ)joqwa! 「こらっ」koraq *促音は翻字的である必要はなく、外来語については杓子定規に<q>で統一しなくても同一の子音を重ねたほうが自然かもしれない。ただし「マッマ」のように<q>を使わないと書けないものもあるので、外来語も含めて一律に<q>を使ったほうが混乱がない。(ただし、<q>=「っ」ではないことに注意。次項で説明するように「長雨」はnagaqame として<q>が使われる)

<n> 撥音「ん」(単独の<n>)*特殊な文字を使用しない。「ん」に母音またはj/wが続くときは<q>をそえて<nq>とする。「範囲」hanqi 「金曜日」kinqjoubi(<nq>を語尾で使用するときは「んっ」と促音として読む。「バンっ」とドアを閉める。"Banq" to doa wo simeru. 同様に、言葉の切れ目で母音字が続くときにも<q>を添える。「濡れ縁」nureqen 「奥羽」Ouqu (この場合は声門閉鎖音のイメージであり促音化しない。<hanq + i> <kinq + joubi> <Ouq + u>のように<q>で見かけ上の閉音節をつくるイメージ)

カタカナ語で使う長音符「ー」は文字とは考えず同一の母音字を重ねてあらわす「ふりがな方式」とする。長音符を使うときは「コミュニティ(ー)」の「ー」など、仮名で表記しない長音のあくまでも「注記用」としてマクロンを用いるのみである。例)「コミュニティ」 <komjunitèī> 「コミュニティー」なら<komjuniteii>となる(符号は省略)。原典がボオドレエル であっても、ふりがな式によりボードレールと区別せず<Boodoreeru>となる。また次に書くように「ヸオロン」は「ヰ」に濁音符はつかないので、ふりがな式に「ヴィオロン」と修正し、それによってローマ字化するので、元の仮名の用字の「ヸ」は失われる。(ー)は仮名文字ではなく漢字表記と同様に用字の違いと考え、これを厳密に復元(相互完全互換が目的ではない)できたところで、漢字が復元できないのと同様に用字までは復元できなくてもよいと考える。(そもそも漢字などの用字的表記はローマ字化ですべて失われる)つまり、「バレー」と「バレエ」は仮名文字の違いではなく「長音の表記法の違い」に過ぎない。「わたし」と書くか「私」と書くかは漢字で書くか仮名で書くかという用字上の違いであって、その違いをローマ字化したあとで復元することはできない。「わたくし」と書く、またはそう読む場合は仮名文字自体の違いであるから、「わたし」と「わたくし」は明確にローマ字で区別される。

 

特殊な仮名表記について(参考)

例えば,明治以来の文芸作品等においては,下記のような仮名表記も行われている。ヰ:スヰフトの「ガリヷー旅行記」Suwihuto no Garivaa Rjokouki  ヱ:ヱルテル Weruteru ヲ:ヲルポール Worupooru ヷ:ヷイオリン vaiorin  ヸ:ヸオロン vioron  ヹ:ヹルレエヌ verureenu  ヺ:ヺルガ Voruga ヂ:ケンブリッヂ Kenburiqdi  ヅ:ワーヅワース Waaduwaasu

*これについては、「ふりがな式」で考え、ワ行の仮名に濁音符をつけたものは「ヴ」vu に置き換えるものとする。
 (「ふりがな」の定義は別途整理する)

 例えば、「ヸオロン」は「ゔぃおろん」vioron と「ふりがな式」で考える。ローマ字に写すと元の「ヸオロン」の表記は失われる。

*「ヰ」「ヱ」「ヲ」「ヂ」「ヅ」については、ローマ字表の仮名のとおり<wi><we><wo><di><du>をあて、読みは仮名の綴りに従う。

*「あ゙」などは「ゔ」<vu>とどう折り合いをつけるのか不明につき未検討。
*「が行」鼻濁音については仮名では区別しないので、未検討。(むしろ、これこそ表音式ローマ字で検討すべきことではないかと思う。「大釜」と「大蒲」は前者が鼻濁音になり、表音的に区別できる)

 

歴史的仮名遣いを翻字する場合の注意(参考)

仮名の綴りは変えずに、母音・半母音字による拗音(合拗音は「ワ」のみ)、促音の<つ>は表音的に仮名小文字とする(現在の正書法ではないので現代仮名遣いにあわせて若干加工する)。「ゐ」「ゑ」「を」「けふ」など拗音でも母音・半母音字以外は小文字化しない。「たうきゃう」Taukjau 「うゐすきい」uwisukii「けふ」kehu

 例えば「くわ」は「くゎ」kwa、「かつた」は「かった」kaqtaと「ふりがな」を振って考える。

 

棒引き長音についての補足(ふりがな式)
*繰り返しになるが、原典で「ボオドレエル」と表記されたものは「ふりがな式」により「ぼおどれえる」Boodoreeruとなり、元の仮名綴りの「ボオドレエル」をローマ字から復元することはできず「ボードレール」となる。

*当然のことながら、元の漢字、送り仮名、カタカナと平仮名の表記上の書き分けも含めてすべて「ふりがな式」により「一意のひらがな表記」となり、漢字かな交じり文の漢字や符号を含め元の字種などの表記をローマ字から正確にそのとおり復元することは不可能である。

 よって「バレー」「バレエ」は「ふりがな式」により、ともに「ばれえ」となるので、元の「バレー」「バレエ」の表記上の区別は失われ、ローマ字上ではともに<baree>となる。仮に「バレ絵」なら「ばれ+え」と考え<bareqe>となる。(「ボーリング」は「ぼおりんぐ」で<booringu>「ボウリング」は「ぼうりんぐ」で<bouringu>となり、仮名綴りが違うのでローマ字でも書き分ける)原則として同一の母音の連続はイメージとしてはひとまとめの長音ととらえる(必ず長音になるというという意味ではない)。なぜなら翻字式ローマ字は表音式ローマ字のように発音のみを写していくローマ字ではなく、仮名のつづりを置き換えていくローマ字だから、読みは仮名の綴りとしてどう読むかに依存する。

 「コミュニティ」のように本来「ティー」とするところを「ティ」と仮名で書く場合は、仮名綴りにあくまでも従うので<komjunitèī>として「ティー」と長音で読む場合は長音符で注記することができる。厳密表記以外では符号はすべて省略を原則とするので<komjunitei>で十分である。もし仮名の表記が「コミュニティー」であるなら<komjunitèii>と棒引き長音を同一母音を重ねてあらわすことになる。この場合も注釈符号は省略し<komjuniteii>で十分である。


以上、ローマ字の綴りを「音韻」をもとにしたヘボン式や訓令式などの「表音式ローマ字」に対して「音韻」ではなく「仮名文字(またはその綴り)」に対応させたローマ字の体系を「仮名に従うローマ字」と定義する。  
 
(文例 志賀直哉「暗夜行路」より) Siga Naoja "Anqja Kouro" ~jori

  Kesiki ha ii tokoro daqta. Nekoronde ite iroqiro na mono ga mieta. Maenosima ni zousenzjo ga aru. Soko de asa kara kaankaan to kanaduti wo hibikasete iru. Onazi sima no hidarite no jama no tjuuhuku ni isikiriba ga aqte, matubajasi no naka de isikiri-ninsoku ga taezu uta wo utainagara isi wo kiridasite iru. Sono koe ha mati no haruka takai tokoro wo tooqte tjokusetu kare no iru tokoro ni kikoete kita.

  Juugata nobinobi sita kokoromoti de, semai nureqen he kosikakete iru to, sita no hou no sjouka no jane no monohosi de, sizumikaketa taijou no hou wo muite kodomo ga konbou wo huqte iru no ga tiisaku mieru. Sono ue wo siroi hato ga 5~6-wa sewasisou ni tobimawaqte iru. Sosite hi wo uketa hane ga momoqiro ni kirakira to hikaru.

  6-zi ni naru to ue no Senkouzi de toki no kane wo tuku. Goon to naru to sugu koon to hankjou ga hitotu, mata hitotu, mata hitotu, sore ga tooku kara kaeqte kuru. Sono koro kara, hiruma ha Mukaizima no jama to jama to no aida ni tjoqto atama wo misete iru Hjaqkanzima no toudai ga hikaridasu. Sore ha pikari to hikaqte mata kieru. Zousenzjo no dou wo tokasita jou na hi ga mizu ni uturidasu.

  10-zi ni naru to Tadotu-gajoi no renrakusen ga kiteki wo narasinagara kaeqte kuru. Hesaki no aka to midori no akari, kanpan no kiqiroku mieru dentou, sorera wo utukusii nawa demo huru jou ni mizu ni utusinagara susunde kuru. Mou mati kara ha nan no sawagasii oto mo kikoenaku naqte, sendoutati no suru takabanasi no koe ga te ni toru jou ni kare no tokoro made kikoete kuru.

仮名で書いたものをお手本にして安心して符号なしですっきりとローマ字が書ける。この言葉の発音はどうある「べき」かなど考える必要はない。「映画」なら「えいが」。「私は」なら「わたしは」と仮名のとおりに書くだけ。「黄色」なら「きいろ」、ここであれ?と思ったら q のことを思い出せばいい。q は読みやすくするためなので、促音以外では使わなくても間違いというわけじゃない。別に kiiroでもいい。ただ、イメージとしては「キーロ」になる。だから kiqiro と書くとしっくりくる。むしろ逆に q を入れないと違和感を感じるようになる。胡瓜の旧仮名遣いでは「きうり」だったのが新仮名遣いでは「キュウリ」になったじゃないか。「きいろ」なんかどうでもいいと思うかもしれない。そういう仮名遣い云々の話は別の議論で、余計なことは考えず「仮名でそう書いているのなら」そのとおりに書くという話。q は読みやすくするため。黄色はキーロでいいというのなら別にkiiroでも構わない。(私はものすごく気持ち悪い)

 この文例では試行的に母音が連なる形態素などの境界に[q]、促音もすべて[q]で表記している。
 [q]のイメージとしては[+]と考える。[+]に子音字が続くと促音になる。
 nureqen 濡れ縁 Hjaqkanzima 百貫島
 iroqiro いろいろ (iroqqiroなら「いろっいろ」になる)
 例えば、「黄色く」と「キーロック」は基本的仮名綴りではともに「きい…」だが発音の違いというより言葉として区別したい。(kiqiroku / kiiroqku) 桃色をいちいちmomoqiroと書くのは違和感があるかもしれない。でも、ローマ字では母音の連続をひとまとめに見てしまうので momoiro と書くと「ももい…」とまず読んでしまう。となるとアクセントにも微妙に影響してくる。「白い」と「白井さん」ではあきらかにイメージが違うし発音も微妙に違う。(白井は「しらい」だろうがバカとツッコミを入れる人がいたら今そういうことを言ってるんじゃない)表音式ではこれを区別するとなったらアクセント記号をつけようとするだろうがアクセントは地方によって違う。我々は「桃色」という言葉を「もも+いろ」と認識している。発音の違いはそこから出てくる。
 形態素境界は長音符を使えば解決する(こともある)が「大坂」の「おお」は長音か否かのように、すべての言葉に対して「長音」を定義しなければならなくなる。それは日本語にとってはあまり意味がないのではないか。長音か否かではなく言葉の切れ目に意味がある。それが発音の仕方にも微妙に影響してくる。
 表音的に見たら区別しても意味がないように見えるが、アンドロイド andoroido とアンドロ井戸 andoroqido(そんな言葉はないが)では言葉のイメージが全然違う。アクセントも違う。音に従う表音式ではこれを取るに足らないことといって無視をする。もちろん、区別できるといっても母音連続する場合だけであって「息」と「意気」は区別できない。そこまで完璧ではないにしても、[q]の用法の「副産物」として、区別できる言葉がふえるのに越したことはないのではないか。
 外来語の場合、例えば人名では「クリント・イーストウッド」をローマ字で書くときに日本語の形態素の概念を持ち込んで q を挟むのは違和感があるので(例えばIisutoquqdo と書くのかなど)そこは何らかの工夫が別途要るかもしれない。でも「外来語」で困るとしたらどんな場面だろうか。私なら、Iisutouqdo でいいと思う。ou となったら必ず「おー」となるわけではない。注記符号を省略したtou なら「トゥ」と読む場合もある。ローマ字は発音記号ではないと何遍も言っているとおり。
 ローマ字の目的は「日本語」(大抵は人名や地名)をローマナイズすること。特殊音などはダイアクリティカルマークで注記する場合もあるだろうし、日本語になじまない外国語をうまく書けないのはそれこそ「当たり前」ではないか。逆に、表音式ローマ字では「ゲュルツトラミネール・レゼルヴ(*)」なんていうカタカナ言葉をどう表記するのだろうか。つまり「発音に従う」わけだから、このカタカナ語をどう発音するのが「正しい」のかという結論を出さないと書けない。しかも、その発音が「正しい」とする根拠は何か。仮名に従うローマ字ならどんな奇っ怪なカタカナ語でも仮名のとおり表記できる。読み方はカタカナ語に丸投げする。(* 強いて書けば第5表(エ列拗音)の応用で Gèurututoramineeru Rezeruvu となる)ここで誤解しないでほしいのは、こう書くのが正しいと言っているのではなくて、「ばかな質問にはばかな答えが返ってくる」のと同じ。要は、ローマ字を書くときに参考にするのは仮名でどう書いているかを見るだけ。


(文例 米津玄師(よねづけんし)「パプリカ」 *リンク先の歌と照らしてみると日本語のリズムと自然に合うと思う。カタカナはふりがな方式でひらがなとしてローマ字化する。だれが書いても同じひらがなを基準にしてローマ字化する。発音を基準にしたら我が方式はと百家争鳴して収拾がつかない。

"Papurika"
 Jonedu Kensi

Magari kuneri hasjaida miti
aoba no mori de kakemawaru
Asobi mawari hizasi no mati
dareka ga jonde iru

Natu ga kuru kage ga tatu
anata ni aitai
Mituketa no ha itibanbosi
asita mo hareru ka na

Papurika, hana ga saitara
hareta sora ni tane wo makou
Hareruja, jume wo egaita nara
kokoro asobase anata ni todoke

Ame ni kujuri tuki ha kageri
kokage de naite 'ta no ha dare
Hitori hitori nagusameru jou ni
dareka ga jonde iru

Jorokobi wo kazoetara
anata de iqpai
Kaerimiti wo terasita no ha
omoide no kagebousi

Papurika, hana ga saitara
hareta sora ni tane wo makou
Hareruja, jume wo egaita nara
kokoro asobase anata ni todoke

Ai ni juku jo, namiki wo nukete
uta wo utaqte
Te ni ha iqpai no hana wo kakaete
rarurarira

Ai ni juku jo, namiki wo nukete
uta wo utaqte
Te ni ha iqpai no hana wo kakaete
rarurarira

Papurika, hana ga saitara
hareta sora ni tane wo makou
Hareruja, jume wo egaita nara
kokoro asobase anata ni todoke
kakato hazumase kono jubi tomare

まがり くねり はしゃいだ みち
あおば の もり で かけまわる
あそび まわり ひざし の まち
だれか が よんで いる


なつ が くる かげ が たつ
あなた に あいたい
みつけた の は いちばんぼし
あした も はれる か な



パプリカ、はな が さいたら
はれた そら に たね を まこう
ハレルヤ、ゆめ を えがいた なら
こころ あそばせ あなた に とどけ



あめ に くゆり つき は かげり
こかげ で ないてた の は だれ
ひとり ひとり なぐさめる よう に
だれか が よんで いる



よろこび を かぞえたら
あなた で いっぱい
かえりみち を てらした の は
おもいで の かげぼうし



パプリカ、はな が さいたら
はれた そら に たね を まこう
ハレルヤ、ゆめ を えがいた なら
こころ あそばせ あなた に とどけ


あい に ゆく よ、なみき を ぬけて
うた を うたって
て に は いっぱい の はな を かかえて
らるらりら


あい に ゆく よ なみき を ぬけて
うた を うたって
て に は いっぱい の はな を かかえて
らるらりら



パプリカ、はな が さいたら
はれた そら に たね を まこう
ハレルヤ、ゆめ を えがいた なら
こころ あそばせ あなた に とどけ
かかと はずませ この ゆび とまれ



ひらがなの歌詞では「だれかがよんでいる」なのだからそのとおりローマ字化すればいい。でも、実際には「だれかがよんで~る」と歌っている。「うたをうたって」も「うたおーたって」みたいになる。仮に表音式で書いても実際の発音とはずれるのが普通。「かげぼうし」も「かげぼーし」という確定した発音があるわけじゃない。「かげぼおし」と歌っている人もいれば、「かげぼうし」と文字通りに歌う人もいる。どう発音しようが「かげぼうし」という仮名の綴りは固定であって万人が認めている。これこそが「正書法」と言うべきもの。あとは分かち書きの仕方で多少の違いがある程度。ローマ字の綴りの根拠としてかくも明確な基準があるのに学者までもが一緒になって「表音的に」長音で書きましょうとかいってローマ字を引っ掻き回している。この責任はかなり重大かつ罪深い。ローマ字は「正確に発音をあらわす」ものだと思い込まされているから、英語までローマ字のような読み方になってしまう(この辺の弊害はかなり大きい)。何といっていいかうまく言えないが、大事なのは「スペル」であって「発音」じゃない。たかだかアルファベット26文字程度で世界じゅうの言葉が正確に発音どおり書けるわけがない。フランス語はフランス語のように読み、英語は英語のように、日本語は日本語としてちゃんと読めるものであればいい。東京大学英語研究部会か何か知らないが、地下鉄をtikatetuと書いたら外国人に読めないからchikatetsuと書けという。東京大学のレベルが世界的に見て低いのもうなづける。本当に言ってるから驚く。ここまで来ると宗教ではないか。英語を中心にしか考えてないんだろうが、地下鉄はどう書いても外国人には読めない。フランス語を知らない外国人がフランス語を読めないのと同じ。ゴミ捨ての看板を外国人向けにと思ってローマ字で書くのと同じ。読めると思ってるのか? あの笑い話を東京大学が真顔で言ってる。東京大学の言によれば、地下鉄は chikatetsu と書けば外国人にもわかるのだという。

(歴史仮名遣いの例)


Iro ha nihohedo, tirinuru wo. Wa ga jo tare zo, tune naramu. Uwi no okujama kehu koete, asaki jume mizi, wehi mo sezu.

Giwon Sjauzja no kane no kowe, sjogjau muzjau no hibiki ari. Sjara sauzju no hana no iro, zjausja hiqsui no kotowari wo arahasu. Ogoreru hito mo hisasikarazu, tada haru no jo no jume no gotosi. Takeki mono mo tuhi ni ha horobinu, hitohe ni kaze no mahe no tiri ni onazi.

*仮名に従うローマ字なら日本語の古典すらローマ字化が可能だ。盲目的に仮名に従うのではなく、促音「つ」は小文字の「っ」(というより促音として)に、拗音も小文字に置き換えてローマ字に変換している。この辺は恣意的かもしれないが、あくまでも歴史仮名遣いに対応しようと思えば仮名に従うローマ字の方式どおりに書くこともできるという一例として挙げてみた。
現代日本語の正確な発音を後世に遺すということなら、ローマ字で中途半端にやることではなく、専門的な発音記号を使って学術的に正確に記録しておくべきこと。ローマ字は発音記号ではないし、「表音的に」という言葉もいい加減に考えていると間違えるのではないか。
ポルトガル式ローマ字があって、ポルトガルを基準にした表音式ローマ字なので、当時の日本語の発音を知ることができたということはあったかもしれない。だから表音式に書いておくほうがいいというが、現代日本語の発音は国際的な音標記号で学者の手によって正確に記録してもらえばいい話。
歴史仮名遣いの仮名に従う(若干の加工は必要)ことで日本語の「正しい」?正式な綴りはこうだと言うことはできるかもしれない。おそらく形態素を q で分けなければならない言葉もぐっと減る。だからといって、歴史仮名遣いを復活しろなどという「とんでも理論」をおしつける気は毛頭ない。完璧に普及している現代仮名遣いに従えばいいし、もし将来現代仮名遣いが改訂されたら、やはりその仮名遣いにローマ字は従うだけ。
ローマ字は表音文字なのだから表音的に書いて当たり前だ。学者までもがこんな固定観念で凝り固まっているのは一体どういうことだろうか。

(higurasi)